一九八二(昭和五七)年以米、一五年間製品企岡部門に腰ぞ据えてクラウン系一本で、企画案の実現のために苦心してきた第一センターの主担当員(課長職)Gによると、「フロントのオーバーハングを大幅に短くしていますが、これを実現するために、エンジンル−ム内の機器の配置や大きさについて、まさにミリ単位で何度も検討を重ねました。
その結果として、デザイン部門の要求をはばかなえるところえてできた、ということ、でしょうね」と語る。
Gは現行のアリストの開発が始まったときから、専任でアリストを担当してきた。
CどのNにとっては、まさに頼りになる存在である。
一九六九年に福岡の有明高専を出てTに入り、二年間は車両の耐久性の評価を担当したが、その後排気対策の実験や認定の仕事をやって、八二年から製品企画に転じた。
クラウン系の企画担当になってから長いが、このアリストほどパッケージングに対する要求が厳しいものはなかったという。
初代アリストをつくることが決まってからは、ずっとアリストを担当してきた。
「アリストは国内向けだけでなく、とくに北米市場においてはレクサスGSという名称で高級スポーティカ!という位置づけて販売していますので、エンジンもV8のものを積みます。
国内向けはいまのところ、直エンジンのみの設定ですけれども、V8という大きなエンジンでも収まるようにエンジンル−ムのレイアウトは考えています」エンジンはこれまでより五O後退した位置に配置されている。
そんなことは顧容にとっては別になんの影響もないことのようにも思えるが、それが寸法を短くしながら、内部を広くして取り回しのいいクルマ、収納能力の高いクルマにするための努力のひとつなのである。
「わずか五O畑、ですが、エンジンのレイアウトを変更するというのは、とても大変なことでした。
それに、バッテリーについても、これまではタイヤよりも前に置いていましたが、それを後方に持ってきています。
こう守ることで、重量物であるバッテリーを自動車の重心に近いところに近づけることになりますが、これがスポーツカ−に欠かせない操縦安定性を高めることに貢献するわけです。
衝突安全の両からも有利になるのですが、このバッテリーの配置変更だけでも、ちょっと佐置を動かせばいいというわけではなくて、それ以外の機器のサイズや取り付け位置を変えねばなりませんから大仕事でした」と後藤はにこやかに語ってくれた。
アリストをクラウンのバリエーションとして考えてきたひとつの要素は、国内における販売底系列との関連である。
クラウンぞ売る販売チャネルでは、アリストは取り扱っていないからだ。
アリストを売っているのは、圏内でもTの販売系列としては拠点数などで弱い立場にあるビスタ応とオ−トである。
それらの販売店では、他の販売店系列におけるクラウンと同じ位置づけをもっ。
セルシオやクラウンと同じように、そこで扱う最上級車となっている。
そのため、トランクがすこし狭いということも、販売店にとっては、非常に問題になることだった。
ともすれば、他の系列て販売されているクラウンやセルシオと比較されてしまうためである。
どうしてもトランクを広くして欲しい、という強い要求が販売部門から寄せられるのも、こうしたことを聞くと納得できることである。
たとえ「これはクラウンとは違います。
スポーティなイメージを重視したクルマ、ですから」と当初の開発意図を述べたとしても、販売店の社長たちは承知してくれなかった。
どうしても次期モデルでは、他の系列庄の最高級車なみのトランクの広さを確保して欲しい、そうでないとわれわれの庄では販売する自信がないというのだ。
Nは言う。
「全体の長さを二五mも縮めながら、トランクスペースは四一Oリッターから五一五リッター(VDA法による計測値)と約二割も大きくしました。
といってキャビンそ狭くしたわけではなく、逆にぐっと広くなっているのです。
これで版売店の人たちも納得してくれるはずです」Nは、これまでの『スポーティH小さなキャビン』という概念を払拭して、新しい高級スポーティセ、ダンではゆったりした室内が必要という考えのもとに、このボディ開発を進めてきた。
このことが『新時代ハイパフォーマンスセダン』と称することになった意味あいと受け取ることができそうである。
世界第一級の資質と自賛するためには、徹底した技術の裏づけが必要だった。
そのうちのひとつ、「胸の高鳴る雰囲気そっくり」についての秘話を紹介してみたい。
それは『エキサイティング活動』と名付けられたものだった。
開発陣は五つのワーキンググループをつくった。
先にも記した『ひとめ見て』『すこし動かすだけで』伝わってくる感動をどうすれば具現化できるか?を項目別に分けての活動である。
『ひとめ見て』の立場からは、塗装の研究グループが活躍した。
どんな色、であれば、どのような輝きであれば、ひとめ見たときに胸が高鳴るような印象になるかを論じいろいろな塗料を集めてはパネルにそれを塗つての比較検討が進められた。
『すこし動かすだけで』の観点からは、胸のすく加速を探究するグループやエンジンのサウンドのめりはりを研究するグループが、パワー感、エンジンの回転上昇の雰囲気などを細かく検討し、音色や音の高まりの状態を詳しく調べていった。
『世界トップレベルの操安性』を求めるグループは、テストコースで苛酷な操舵を繰り返しながら、サスペンションのチューニングに余念がなかった。
『風切り音』の研究グループでは、わずかでも気になる風切り音の発生源を突き止め、それらをひとつひとつ潰していく研究が進められたのだった。
具体的な一例を示してみよう。
サウンドのめりはりを考えるグループでは、これまでのアリストで指摘された走行中に感じられるゴロゴロ音(低周波音)をどうやって抑えこむか?がまずテ−マになった。
そこで、フロアパンを面分割して共振周波数を調べ出していった。
この分析の結果、フロアのどの住置でも、その部分の共振周波数が、ゴロゴロ音として耳に聞こえる四0〜八Oあたりと共振しないようにと、フロアパンの部分的な板厚守決めていった。
これは、非常に手間が掛かる年末だが、アリストが目指している世界第一級の資質を備えるためには、やらざるを得ないま来だった。
しかも、加速時のエンジン音の高まりをただ抑えて静粛さの方向に持っていくのではなく、いかにして心地よく聞かせるか?が重要であった。
というのも、スポーティカ−の場合には、単純に静粛であることが望まれるのではなく、心地よく感じられるような加速のサウンドが必要であるためだ。
どこから出てくる音が、そうした心地よきにつながるのか?いろいろ調べていくと、エンジンルーム内の空気の流れ具合によって、微妙に音色が変化することが解き明されたのである。
そこで、エンジンル−ムの内部のサイドの部分に、ゴム製の板を取り付けて、空気の流れを制御することまでやったという。
単なる外皮だけのスタイリングではなく、骨格から諦勤旬にっくり上げていったデザインがこれだ。
全長を115mmも短くしながら、トランクスペースは100リッター上も増えている。
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